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鉄路点描 015

  • Posted by: ふうらいぼ
  • 2015-04-26 Sun 21:20:00
  • 鉄路点描

 基本、深夜の電話には出ない主義だが、懐かしい名前が携帯電話の画面に表示され電話を受けた。
 携帯電話越しに聞いた声は歳相応に落ち着いた声になった懐かしい男だった。

 『あいつも44になるぜ?』

 同い年の仲間達で普段から付き合いがある奴も少なくなった。
 そんな仲間の一人があの日、仙台市場から荷物を積んで大船渡を目指していたと聞いたのは1年以上経過してからだった。

 『久しぶりに飲もうぜ』

 肝胆相照らす仲の男達だ。
 言いたい事はすぐに伝わってきた。

 その夜の内にネットから夜行バスを手配し、横浜から仙台へと旅立つ算段をした。
 早朝の仙台でバスを乗り継ぎ、石巻へ到着したのは、まだ朝の空気がひんやりとする午前8時前だった。

 聞いていたルートを思い出し車を走らせる。
 かつて見たあの黒い波の押し寄せる光景を思い出した。
 そして、見覚えのある通りを抜け女川に差し迫ったとき、言葉を失って車を止めた。

 気が付けば助手席に居た仲間があんぐりと口を開けていた。

 『ここまで津波が押し寄せたのか』

 街全体をかさ上げする工事が進む女川。
 その中心となる駅が再生していた。
 駅の中には温泉施設が作られ、町民が手に手に風呂道具をさげやって来ていた。

 聞けば、地震の後、一番困ったのが風呂だそうだ。
 次の地震の時に困らないように・・・・
 そんな願いも込められているのだとか。

 駅をあとにし、ちょっと早い時間にホテルへとチェックイン。
 夜になってからの誕生パーティーに備えた。

 主賓はまだ帰ってきていない。
 海が好きなのか山に惚れ込んでいるのか。
 未だにどこかをほっつき歩いているのだろう。

 5人で居酒屋へと繰り出し、6人分のビールを頼んで先に始める事にした。
 その時、宴会部長な仲間が突然立ち上がって口上を述べ始めた。
 仲間のためにハッピーバースデーを歌って欲しい!と。
 酔いの回った男達が大声でハッピーバースデーを歌った。

 そして、早く帰ってこい!と。
 誰かが言った。

 『見つかるまでは、シュレディンガーの猫だ』

 と。
 笑って泣いて。また笑って。
 賑やかな夜だった。

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